理学博士が実践するアイデアをひねり出す5つのメソッド

はじめまして、理学博士の園田です。

皆さんの想像通り、メガネをかけています。

突然ですがみなさんは、「博士」に対してどのようなイメージを持っていますか?

● ノーベル賞をとるすごい人たち

● 頭が良くて何でも知っている

● 難しい数式をなんなく使いこなす

● 誰も思いつかないような発明をする

以上のような完全にかたよったイメージなのではないでしょうか?(笑)

多くの博士は、「論文」をかくのに苦労して、専門分野のむずかしい教科書にくじけそうになり、英語での発表にニガテ意識があります。…たぶん、天才以外は。

ここで、「論文」というのは、研究成果をまとめて“論じた文章”のことです。ネイチャーやサイエンスといった科学雑誌に投稿して、専門家のきびしい審査をクリアしなければなりません。

そして、その論文の内容は、世界でただ1つのオリジナルなものでなければなりません。アイデアが斬新で、ユニークなものだけが認められます。

では、天才ではないごくごく平均的な博士が、毎年きちんと論文を書くために、どのようにアイデアを出していると思うでしょうか

この記事では、論文を書くために、ぼくが15年ほど実践している「アイデアの出し方」について書いていきます。

もちろん、研究だけでなく、ビジネスや仕事をおこなう上でもヒントになれば、という思いで書いています。

ネタ出しして企画にまとめアイデアの螺旋的進化を起こす

僕のアイデアをだす根幹は、「ネタと企画の螺旋的進化」です。

なんだかそれっぽいですが、「ネタで発想をふくらませて、企画でまとめる」だけです。発想法の本を読むと、多くの著者は同じ主張をしています(『考具』『ブレイクスルー』)。

言いかえると、

● ネタ=発散思考=問題に対して多様な解決案を生み出す思考法

● 企画=収束思考=発散思考によって集めたバラバラなアイデアを、まとまりのあるものに集約していく思考法

となります。

この2つの思考の往復運動をしていくと、どんどんアイデアが具体化していきます。やってみるとわかるのですが、おどろくほど進化します。

そして、企画シートとネタ帳のツールをつかうことで、意識しなくても思考のクセをつけていけます!

ちなみに、企画とネタについて、「なんらかの“ツール”を持っていること」がいいアイデアをだせるかどうかを決めるはずです。(もちろん個人的な意見ですが、あなたが現在ツールをもっていないなら...!?)

ここで紹介するメソッドは、図のような関係になります。

「企画シート」と「ネタ帳」の往復運動がベースです。そして、「マインドマップ」、「ブレーンストーミング」、「散歩」でアイデアをどんどんだしていきます。

 

博士が実践するアイデア出しのシンプルな5つのメソッド

メソッド1.「企画シート」にまとめることが全ての答えだった

ビジネスから「企画シート」を学ぶ

「企画」が大事だとわかるまで、2年ほどかかりました。

“アイデア”のままだと、現実的ではなく、うまく結果がでません。「企画シート」で具体化していって、つよくします。アイデアの完成形が企画です

企画シートは、ビジネスなら以下のようになるでしょう。

【企画シート(ビジネス)】

ターゲット(顧客層):

タイトル(企画名あるいは商品名):

ねらい(どうしたいか):

コンセプト(企画の中心になるコア):

参考資料:

段取り(およその骨組み):

仕込み(あらかじめ準備しておくこと):

企画シートの1行1行を埋めることは、実際やってみるとかなり大変です。

仮説=アイデアが湧いてきて、シートを埋めていきます。でも、良いアイデアだと思っていても、「あれ?」となることがよくあります。

アイデアが現実的でないので、修正をたくさんしていきます。つまり、企画シートがアイデアのチェックになるのです。

逆に、これでアイデアの確認をするトレーニングしていくと、“アイデアの精度”が高くなります。

おそらく、脳がシートに適応して、客観的な視点をもてるようになるのでしょう。

研究の企画力

企画シートは、研究では「実験案」になります。

以下は、ぼくの研究したオカヤドカリの動物行動学の実験案です。実験は、ヤドカリが身体の大きさによって、「通れる大きさの入口の判断(通過可能性)ができる」という仮説の検証です。

ヤドカリは貝殻に入っているだけでなく、じつは貝殻の大きさをよくわかっているのです。そして、通れる入口のサイズが判断できるのです。

【実験案(企画シート)】

タイトル:オカヤドカリの通過可能性の知覚に関する実験

テーマ:ヤドカリの通路入口の選択について

仮説:大きいヤドカリは大きい入口を選択するのではないか

根拠:自分の先行研究でヤドカリが貝殻の大きさを知覚できたから

予測:ヤドカリ(大)の選択が入口(大)にかたよる傾向がでる

実験条件:大きい入口と小さい入口を並べて、どちらを通過するか

段取り:入口の大きさ、コースの長さ、試行回数をきめる

課題:入口の大小の差を強調しておく必要がある?

先行研究:Sonoda et al., Biology letter, 2012(先行研究の論文)

意義:無脊椎動物のヤドカリが人間とおなじように「通過可能性」が知覚できることを示せる

ちなみに、この実験はうまくいきました。

大学で購読契約していれば、『計測と制御』から読めます。無料なら、英語版ですが、ぼくのヤドカリの先行研究があります。

実験案は研究者向けですので、自分の目的にあわせて企画シートをつくってみてください!

おすすめの書籍:『齋藤孝の企画塾』

僕は『齋藤孝の企画塾』で企画を勉強しました。企画シートの元ネタはここです。

そして、企画をたてる練習をくりかえして、論文が書けるようになりました。必読書です。

 

メソッド2.「ネタ帳」でアイデアをストックする

メモのストックをする

とはいえ、いきなり企画をつくるのは難しい(苦笑)

なので、材料をあつめる作業(ストック)が必要です。

企画のパーツをふだんの生活のなかで、せっせと貯めこんでいくのです。材料はむずかしく考えるのではなく、気になったことを“メモ”するだけです。

メモはアウトプットの最小単位といえるので、アイデアのきっかけになります!もちろん、メモがアイデアに直結することは少ないのですが、土台になります。

そして、メモは文章のネタにもなるので、ムダになりません。やりかたはカンタンで、メモ帳のページの上側に「テーマを書いておくだけ」です。

はじめはページが空白でも、ある時から「自然と埋まる」のです。白いページがあると、無意識に埋めたくなります!

メモから企画をたてる

ぼくは、Evernote(スマホのメモ帳アプリ)にメモをつけています。

たとえば、写真のように、「オカヤドカリ」とテーマをかいておきます。サブテーマとして、「分類」「生態」「行動」「実験」のように増やしていきます。

最初の「分類」「生態」などは、正直にいうと、Wikipediaを写しただけですが(笑)でも、「行動」の段階になると、論文からひっかかった箇所をひろっていきます。

そして、「実験」では、実験案につながるメモを書き込んでいけるようになりました。たぶん、思考が定着して、無意識レベルで考えられるようになってくるのでしょう。

そうやってページが埋まってくると、実験案のアイデアがふと浮かんでくる。そしたら、別のページで、企画シートの仕上げをしていきます。

もちろん、いきなり実験案のメモを書き込んでいっても大丈夫です。慣れてくると、「いきなり思いつく」ことが増えていきます!

問題意識をもつ

企画もゼロから生まれるわけではなく、ネタ集めから始まります。

たくさん集めると、不思議とアイデアがでてくるものです。たぶん、ネタ帳をもつことが問題意識をもつことになるのです。

そして、問題意識をもちながら生活していると、今まで気にならなかったことが目に飛び込んできて、アイデアにつながるのです。

ぜひ、ネタ帳をつくってみてください!

おすすめの道具:モレスキン

ぼくは、最初はMOLESKINEという本物の手帳をつかっていました。

スマホだとほかのアプリに気をとられるので、慣れない人にはオススメです。伝統のある手帳メーカーです。

 

メソッド3.1人でアイデアをだす「マインドマップ」

発散的思考のツール

マインドマップを知っていますか?

マインドマップはトニー・ブザンが発明した思考法です。頭のなかで起きていることを“見える化”したツールです。

書き方は、テーマ(キーワード)を中心にかいて、関連キーワードを書きたして放射状にひろげていきます。正式な方法はあるのですが、ぼくはキーワードだけで書きます。

マインドマップの方法は、考えたいテーマについて構造的に整理できます。そして、マップの枝から新しい発想がでてくるイメージ。まさに発散的思考です。

正式には紙に書くのですが、ぼくはXmindというパソコンのアプリをつかっています。もちろん、紙のノートでも書けます。

タイミング1:考えをまとめる

マインドマップは、テーマの内容が多くなって、考えがまとまらない時に有効です。

整理することで問題点がはっきりしてきて、新しいアイデアがでてきます。

タイミング2:文章を書く

文章をかくときは、はじめにマインドマップで整理して、アウトラインをつくります。

こうすると文章がカンタンになって、新しい表現や内容がでてきます!

 

メソッド4.みんなでアイデアを出す「ブレーンストーミング」

脳をまぜあう発想法

ブレーンストーミングは、集団発想法のひとつで、みんなでアイデアをだしあうことで相乗効果や連鎖反応をおこす手法です。

人数に決まりはないですが、5〜7名が一般的です。また、テーマや課題をまえもってアナウンスしておくほうが効果的。

ブレーンストーミングの4原則

  • 結論を出さない(結論厳禁)
  • 粗野な考えを歓迎する(自由奔放)
  • 量を重視する(質より量)
  • アイデアを結合し発展させる(結合改善)

(Wikipedia引用)

この4原則はいいかえると、「相手の意見を否定しない」ことです。そうすると、気楽に意見が言えて、どんどんアイデアがでてきます。

ぼくは研究のミーティングが毎週ありますが、研究者の”議論”はいわばブレーンストーミングです。

いつのまにか相手の言葉が自然にでてくる。あるいは、逆に、自分の言葉が相手に“感染”します。それは「脳が混ざりあう感覚」といえます。

楽しいので、まずは気軽に友達どうしで、“議論”(ブレーンストーミング)から始めてもいいかもしれません。

おすすめサイト:キャッチコピーメーカー

とはいえ、いきなり議論は難しいかもしれません。職場もそういう文化がないかもしれません。

そういう人におすすめなのが、キャッチコピーメーカー

”歯切れのいい”キャッチコピーを自動生成してくれます。これで1人ブレーンストーミングができます。

まずはここから始めてもいいかもしれません。

 

メソッド5.身体をうごかしてアイデアをだす「散歩」

哲学者のように歩く

京都には「哲学の道」があります。

その道は、西田幾多郎をはじめとした京都大学の哲学者たちが思索にふけりながら歩いたそうです。

かの哲学者カントは、毎日決まった時間に決まった道を散歩することが日課だったようです。哲学者はよく歩くのです。

僕もアイデアが煮詰まった時によく歩きます。大学の構内や自分の部屋を歩きまわると考えがまとまり、思わぬアイデアがでてきます。

歩くことで身体がゆれてセロトニンなどの脳内物質がでて、脳が活性化されるようです。

アイデアをだすときは“散歩”もオススメです。

おすすめ書籍:『齋藤孝の30分散歩術』

『齋藤孝の30分散歩術』では、散歩の“効能”についてたっぷり解説されています。アイデアだけでなく、心の整え方、人間関係についても知恵がつまっています。

読んだらすぐに歩きたくなる1冊です!

 

まずはネタ帳からはじめる

アイデアをだすメソッドを5つ紹介しました。

もし何から始めていいか迷ったときは、「ネタ帳を1冊買うこと」からやってみてください。MOLESKINEでもいいし、なんでもいいので買ってみてください。

くどいかもしれないですが、ちゃんとお金をだすことが大事です。不思議なことに、もったいないと思うのか“継続”しやすいです。

家においてあるメモ帳だと、気持ちがはいらないので危険です(笑)

そして、メモ帳1冊を自分のアイデアで埋められたら、アイデアをだす基礎体力がつきます。アイデアをだすのは、かなり脳がつかれるので、体力が必要です。

アナログのメモ帳を使い終わったら、スマホのメモ帳アプリに移行してもいいですね。ただ、慣れないうちはアナログの手帳でないと集中できないかもしれません。

 

アイデアで人生をきりひらく

ぼくが博士号をとってから何年もたちます。

でも大学院の当時は、論文が書けない時期がありました。 ←回想にはいりました(笑)

研究者は論文が書けることが生命線です。それが書けなかったのです。

でも、「アイデアさえ出せればなんとかなる」と一心にトレーニングしました。

そして、博士号がとれました。

これから先もよくわからないですが、どんな仕事でもアイデアさえ出せればやっていけると実感しています。

みなさんも、もし人生を考えるときがあったら、“アイデアの出し方”について知ると勇気がでるかもしれません。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます!!

 

記事を書いてくれた博士の研究と出身研究室

ヤドカリの論文
http://rsbl.royalsocietypublishing.org/content/8/4/495

郡司ペギオ幸夫の研究室(出身研究室)
http://www.ypg.ias.sci.waseda.ac.jp/

 

ABOUTこの記事をかいた人

理学博士。研究分野は、複雑系科学からはじまり、動物行動学、生態心理学、認知心理学、自動運転、とひろがっています。現在は、フリーランスの研究者になるべく奮闘中。

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